診療部門
心臓血管外科
当院は神戸大学外科専門研修プログラム、岡山大学広域外科専門研修プログラムの修練施設です。
<見学申込・お問合せ>
心臓血管外科部長 築部 卓郎 t-tsukube@kobe.jrc.or.jp
神戸赤十字病院 人事課 078-241-9214(直通)
心臓血管外科の診療内容・特色
心臓血管外科について
我々のミッション
24時間いつでも最良の心臓血管外科手術を提供いたします。
心臓血管外科について
心臓血管外科では、2003年8月の開院から2020年12月末までの17年5ヶ月間に約3,700例の手術を行ってまいりました。このうち心臓大血管疾患に対する手術を2,753例に実施、兵庫県災害医療センターと神戸赤十字病院のスタッフが患者さんの救命のために昼夜を問わず一丸となって努力した賜物であると感謝しております。改めまして、神戸市を含めた兵庫県の心臓血管外科の中核施設の一つとしての使命を担う責任を感じています。
心臓血管外科の特色
緊急手術が多い
神戸赤十字病院と兵庫県災害医療センターの循環器内科・放射線科・麻酔科および救急医が一体となり、年間を通して24時間対応で患者さんを受け入れており、その結果、心臓大血管手術の中で緊急手術が全体の34%と大変多くなっています。

他医療機関からの紹介患者さんが多い
手術患者さんの内訳ですが、院内診療科からの紹介が約30%、他の医療機関あるいは救急隊の直接搬入例が約70%です。他医療機関からの紹介患者さんが大変多いという特徴があります。紹介患者さんは必ず受け入れて手術をする方針ですが、すでに手術中に、他院から緊急手術が必要な患者さんの問い合わせをいただいた場合にはお断りさせていただく場合もございます。紹介病院の立地の内訳は神戸市内が中心ですが、兵庫県全域、大阪府、岡山県、愛媛県を中心とした中四国地方等です。
手術の内訳
主な疾患では、冠動脈血行再建術(冠動脈バイパス手術)を主に狭心症や心筋梗塞に対する手術は544例、大動脈弁人工弁置換術や僧帽弁形成術のような弁膜症に対する手術を497例、胸部大動脈瘤や大動脈解離に対する手術を1,045例、腹部大動脈瘤に対する手術を567例等 行っています。
患者さん一人一人に最良と考えられる術式について、十分に相談をして行ってまいりました。冠動脈バイパス手術、弁膜症の手術、大動脈疾患に対する治療のいずれにおきましても、いろいろな治療の選択肢は存在します。若い方に向いている手術、高齢の方向きの手術、1回の手術は短時間で終わるが遠隔成績が不安定なもの、1回の時間はかかるが長期間の成績に優れているものなど様々な要因があります。手術の術式の選択におきましては、人工心肺を用いない方法、小切開で行う方法から、大きな傷はできるが根治的な手術までバリエーションは豊富にあります。これらの点を十分に相談して治療にあたってまいりました。

特に大動脈瘤や大動脈解離に対する手術が多い
大動脈瘤や大動脈解離に対する手術は、弁置換術や冠動脈バイパス手術に比べて難易度の高い手術ですが、当院では弓部大動脈瘤や急性大動脈解離などの胸部大動脈の手術を数多く(1,045例以上)行っています。特に急性大動脈解離の治療総数は、全国的にみても症例数が大変多く手術成績も良好です。
なかでも当院の特徴としては、意識障害を合併した症例に対する超急性期手術があげられます。他施設では手術が見送られることが多かった病態ですが、病気になってから手術を開始するまでの時間短縮の努力の結果、手術を施行した約8割で意識障害が消失/改善することができており、良好な手術成績を誇っています。また、今までは治療に難渋していた心タンポナーデを合併している急性大動脈解離例も、術前の工夫で著しく成績を向上することができました。これらの成果は国際的に評価の高い学術誌に掲載されてきました。その内訳はCirculation2編(2011年、2012年)、Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery2編(2014年、2021年)、Annals of Thoracic Surgery2編(2020年、2020年)となります。またヨーロッパの治療ガイドラインならびに日本のガイドラインに引用掲載され、今まで救命を諦めていた患者さんを救い、間接的ですが国際貢献ができました。また当院放射線科チームと協力して、大動脈疾患に対するステントグラフト内挿術を多数施行しています。
80歳以上の高齢者に対する手術が多い
心臓大血管手術を行いました2,753例の中で80歳台は767例、90歳台は78例であり、80歳以上の高齢者の手術は全体の30.7%でした。最高齢は99歳の男性で、腹部大動脈瘤に対し開腹による人工血管置換術を行いました。元気に退院され、外来通院されています。普通ならステントグラフト内挿術を選択するご年齢ですが、大動脈瘤の屈曲が強かったためにステントグラフトは不適であると判断し、開腹手術を選択させていただきました。
一般に80歳以上の高齢の患者さんの場合、心臓や大動脈に疾患があり手術が必要な状態であるのに、「高齢である」との理由で手術が見送られるケースが多くあります。このような方が、危険な状態になってから救急車で当院に搬送され、結局は緊急手術を行った方が多くおられます。現在は高齢者でも心臓手術は安全に行えますので、当院では「高齢であること」だけをもって手術をしない理由にはしておりません。

心臓大血管疾患以外の手術
上記以外に、末梢血管に対する治療は346例に実施しています。その内訳は、足の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症や、下肢の静脈瘤に対する治療等です。さらに、透析の際に必要な動静脈シャントの作成術なども積極的にお受けしております。
1年を通して24時間いつでも対応しており、今後も継続してまいりますのでよろしくお願いいたします。
若手教育システム・チーム医療の促進:認知的徒弟制の応用
心臓血管外科専門医認定機構認定修練施設(基幹施設)
心臓血管外科チームは多くの職種から出来上がっています。手術中では心臓外科医師(2-4名)麻酔科医師(2-3名)、看護師(3-4名)、臨床工学技士(2-3名)以上のメンバーで一人の患者さんの手術を受け持っています。そこで、心臓外科医師の一人一人の熟達は大変重要であるとともに、チーム医療を促進し、安心安全で最良の手術を行い、継続させ、より発展させることが重要となります。そのために神戸赤十字病院心臓血管外科では「認知的徒弟制」のフレームワークを応用した教育システムを2019年から導入しています。また、医師教育ならびに看護教育にも応用する試みを開始しています。
学会発表、論文発表、講師等の実績(開院以来)
学会発表
(1st authorが当院所属のものに限る)
- American Heart Association(米国心臓協会)学術集会 8回
- European Society of Cardiology(欧州心臓学会)総会 3回
- American Association for Thoracic Surgery(米国胸部外科学会)総会 2回
- Society of Heart Valve Disease(国際学会 心臓弁膜症)総会 1回
- アジア心臓胸部外科学会総会 5回
- 国内の主要学会でのシンポジウム・パネルディスカッションでの発表 21回
- 2020年学会発表数は8題(うちシンポジウム・パネルディスカッション4題)
論文発表
(1st authorまたはlast authorあるいはcorresponding authorが当院所属のもの)
- Circulation 2編
- European Heart Journal Cardiovascular Imaging 1編
- Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery2編
- Annals of Thoracic Surgery 2編
- Journal of Vascular Surgery, Vascular Science 1編
- ESC E-Journal of Cardiology Practice 1編
- Annual Review 循環器 1編
- 大動脈外科の要点と盲点 1編
- 大動脈解離―診断と治療のStandard 1編
- 「今さら聞けない心臓血管外科基本手技」日本心臓血管外科学会 横山斉/福田幾夫/坂東興/田中千陽 編 「開胸法、応用編、胸腹部切開(rib split法含む)」築部卓郎 分担執筆
ガイドラインへの引用掲載
- 2014 ESC Guidelines on the diagnosis and treatment of aortic diseases(ヨーロッパ心臓学会の大動脈疾患に関するガイドライン)1編
- 2015 ESC Guidelines for the diagnosis and management of pericardial diseases(ヨーロッパ心臓学会の心膜疾患に関するガイドライン)1編
- 2020 年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 協力員:築部卓郎
経営学関連の講演など:病院の人的資源管理
経営学を学び人的資源管理の面から医療に役立てているのも、他にはない特徴です。心臓外科部長は、2012年にMBA取得、2020年に経営学博士を取得しています。2018年から神戸大学MBA(大学院経営学研究科専門職大学院)、2020年からは大阪歯科大学大学院において『病院の人的資源管理』についての講義を担当しています。神戸大MBAの講義は、MxM Kobe(文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラムの実践的病院経営マネジメント人材養成プラン)の講義の一部でもあります。人を活かすという面からの病院経営についての内容です。
院内セミナー
心臓血管外科では、毎年院内で心臓外科に関するセミナー:心外Sundayを開催しています。院外の医療機関の方々や学生の参加も募集しております。開催予定は当ホームページ上でお知らせしております。
心臓外科医・専攻医募集
これらの治療実績を心臓外科医のスタッフ5名で対応していますが、スタッフが不足しております。大変多忙にしておりますので、実際に手術を執刀することで臨床の実力をつけたい先生、さらに全国規模の学会で発表などの活躍を目指しておられる先生、またはその両方を目指される先生、あるいは将来はそのような心臓外科医になりたい心臓外科専攻医希望の若手医師の方など、随時募集しています。私たちは臨床医としてpatient firstを実践し、数多くの心臓血管外科領域の手術治療を行ってきたとともに、臨床研究やtranslational researchも重視しその結果を出しております。手術見学、施設見学も随時受け付けております。ぜひ、心臓外科部長までご連絡ください。
診療実績
手術件数
(2003年8月開院~2020年12月)
手術総数 | 3,723件 | |
主な手術 | 心大血管手術 (腹部大動脈瘤567例を含む) | 2,753例 |
末梢血管に対する手術 (動脈疾患<血管内治療は除く>) | 405例 | |
静脈疾患 | 208例 | |
その他 | 357例 |
スタッフ紹介
副院長 兼 心臓血管外科部長築部 卓郎(つくべ たくろう)

卒年 | 昭和60年 神戸大学医学部卒業 |
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経歴 | 昭和60年 神戸大学医学部第2外科入局 平成 4年 Harvard Medical School, New England Deaconess Hospital Research fellow(心臓胸部外科)(-94) 平成 8年 Harvard Medical School, Beth Israel Deaconess Medical Center Clinical fellow(心臓胸部外科) 平成10年 神戸大学医学部第2外科/神戸大学大学院 医学系研究科 呼吸循環器外科 平成15年 神戸赤十字病院/兵庫県災害医療センター 心臓血管外科部長 令和 3年 神戸赤十字病院 副院長 兼 心臓血管外科部長 |
所属学会・専門資格等 | 神戸大学医学部臨床教授 神戸大学大学院医学研究科非常勤講師 神戸大学大学院経営学研究科非常勤講師 大阪歯科大学大学院医療保険学研究科講師(非常勤) 医学博士(神戸大学) 経営学博士(北海道大学)・経営学修士(神戸大学) 心臓血管外科専門医 日本胸部外科学会専門医・指導医 日本循環器学会専門医 日本外科学会認定医・指導医 日本心臓血管外科学会国際会員 米国心臓協会フェロー(FAHA) Society of Thoracic Surgeons, International member EACTS, member ASCTVS member 米国医師免許資格(ECFMG) 日本医療マネジメント学会 |
心臓血管外科副部長泉 聡(いずみ そう)
卒年 | 平成14年 神戸大学医学部卒業 |
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経歴 | 平成14年 神戸大学医学部第2外科入局 平成22年 神戸大学大学院医学系研究科博士課程修了 平成22年 加古川東市民病院 心臓血管外科 平成28年 兵庫県立姫路循環器病センター 心臓血管外科 平成31年 神戸赤十字病院/兵庫県災害医療センター 心臓血管外科 |
所属学会・専門資格等 | 医学博士(神戸大学) 日本外科学会専門医 心臓血管外科専門医(3学会構成心臓血管外科専門医認定機構) |
心臓血管外科医師唐木 順(からき じゅん)
卒年 | 平成28年 神戸大学医学部卒業 |
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経歴 | 平成28年 一宮西病院初期研修プログラム・初期研修医 平成30年 神戸大学外科専門医プログラム・後期研修医 令和元年 兵庫県立姫路循環器病センター(現兵庫県立はりま姫路総合医療センター) 令和 2年 国立循環器病研究センター 専攻医 令和 5年 神戸赤十字病院/兵庫県災害医療センター 心臓血管外科 |
所属学会・専門資格等 | 日本外科学会 日本胸部外科学会 日本心臓血管外科学会 日本血管外科学会 |
心臓血管外科医師菅野 令子(かんの れいこ)
卒年 | 平成28年 長崎大学医学部卒業 |
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経歴 | 平成28年 岡山大学外科初期研修プログラム 平成30年 神戸赤十字病院外科後期研修医 令和 2年 岡山大学外科後期研修プログラム 令和 3年 神戸赤十字病院/兵庫県災害医療センター 心臓血管外科 |
所属学会・専門資格等 | 日本外科学会 日本胸部外科学会 日本心臓血管外科学会 |